2018年 | プレスリリース?研究成果
光合成を支える叶緑体チラコイド膜の新しい性质:チラコイド膜を小さな有机物が透过する「通路」を発见
【発表のポイント】
- 光を受容して化学エネルギーに変换する光合成の最初の段阶は叶緑体の中のチラコイドと呼ばれる袋状の膜で起こる。
- チラコイドの内侧(内腔)では光合成の维持?制御に必须の様々な生理反応が行われる。しかし、それに関连する多様な有机物(光合成装置の分解物など)がなぜチラコイド膜を越えて出入りできるかについては、これまで全く考虑されておらず未解明であった。
- 本研究では、チラコイド膜にアミノ酸等の小さな有机物を无差别に透过する「通路」をつくるタンパク质(チャネルタンパク质)が存在することを発见し、チラコイド膜が有机物を受动的に输送する仕组みを持つことを初めて明らかにした。
- 「チラコイド膜の有机物透过」というこれまで全く认识されていなかった现象を解明していくことで、光合成を支える仕组みに関するより详细な理解が得られるだけでなく、光合成能力の増强や人為的制御を目指した応用的研究にも新たな手掛かりを提供できる。
【概要】
东北大学学际科学フロンティア研究所の児岛征司助教は、同大学大学院生命科学研究科の高桥秀幸教授および福井大学学术研究院医学系部门の老木成稔教授、岩本真幸助教と共同研究を行い、植物の叶緑体チラコイド膜に糖やアミノ酸等の小さな有机物を非选択的に透过させる「通路」をつくるタンパク质(チャネルタンパク质)が存在することを発见しました。光エネルギーを生物体内で使える化学エネルギーへと変换する光合成の最初の段阶はチラコイドと呼ばれる叶緑体の中の袋状の膜で起こります。チラコイドの内侧(内腔)にはおよそ80种类のタンパク质が存在し、主として光合成装置の维持?制御に関する重要な働きを担うことがわかってきています。一方で、チラコイド内腔の生理机能に関连する多様な有机物(光合成装置の分解物や酵素补因子*1など)がどのようにしてチラコイド膜を越えて出入りしているかについては、これまで全く注目されておらず、その仕组みは未解明でした。本グループは代表的な光合成生物种であるシアノバクテリア(Synechocystis sp. PCC 6803)、藻類(灰色藻 Cyanophora paradoxa)、陆上植物(ホウレンソウ Spinacia oleracea)のチラコイド膜を調べた結果、いずれも小さな有機物を非選択的に透過するチャネルタンパク質が存在することを発見し、これらをTPORs (thylakoid pores)と名付けました。さらに、TPORの詳細機能解析の最初の実例として灰色藻のTPOR(CpTPOR)を精製し、生化学と電気生理学の手法を組み合わせて調べた結果、CpTPORの正体は半径約1.3 nmの小孔を形成するタンパク質であることを突き止めました。本研究は、チラコイド膜が小さな有機物を受動輸送*2する仕組みを持つことを初めて実証し、光合成を支えるチラコイド膜機能の理解に関して「有機物透過」という未開拓の領域が存在することを明確に示しています。今後の研究でチラコイド膜の透過機構をより詳細に解明していくことで、光合成を支える仕組みに関する新たな理解が得られるだけでなく、光合成能力の増強や人為的制御を目指した応用的研究にも新たな手掛かりを提供できると期待されます。本成果は、米国生化学分子生物学会が発行する学術誌Journal of Biological Chemistryの最新号に5月18日付で掲載されました。
本研究成果を示す模式図。叶緑体のチラコイド膜には、アミノ酸等の小さな有机物を非选択的に透过する「通路」をつくるチャネルタンパク质(罢笔翱搁と名付けた)が存在することを発见し、チラコイド膜が有机物を受动的に输送する仕组みを持つことを初めて明らかにした。写真は、灰色藻C. paradoxa の叶緑体チラコイド(左上の白枠を拡大)。灰色藻の罢笔翱搁は颁辫罢笔翱搁と名付けた。
*1. 酵素补因子:酵素の働きに必须な、タンパク质以外の因子のこと。
*2. 受动输送:生体膜を介した物质输送のうち、膜を隔てた物质の浓度差を駆动力として起こる输送形态のこと。
问い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
助教 児岛 征司(こじま せいじ)
电话番号:022-217-5717
Eメール:skojima*ige.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
(报道に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
特任准教授(鲍搁础)铃木 一行(すずき かずゆき)
电话番号:022-795-4353
Eメール:suzukik*fris.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)