2020年 | プレスリリース?研究成果
火星コア物質の音速測定に成功 ?火星コアの組成と火星の起源解明に向けて?
【発表のポイント】
- 日本が世界に誇る川井型マルチアンビルプレス(注1)を用いた高圧発生技術、SPring-8(注2)/JASRI および高エネルギー加速器研究機構(KEK)フォトンファクトリー(PF)(注3)の放射光X線により、火星コア(注4)の最上部に相当する20万気圧2000度という高圧高温の極限条件下で、液体鉄?硫黄合金の音速(地震波速度)の精密測定に世界で初めて成功しました。
- 従来、火星由来とされる隕石の化学組成から、火星コアは鉄?硫黄合金で出来ていると考えられてきました。現在稼働中のNASA の火星探査機「インサイト(注5)」によって、火星コアの地震波速度が測定され、それが本研究で得られた音速と一致すれば、その仮説を実証できます。
- 一方、一致しない场合は、火星の起源を考え直す必要があります。地球のように、原始火星にも微惑星の衝突があったとすれば、コアには别の不纯物が含まれている可能性もあります。火星の卫星フォボス?ダイモスの巨体衝突起源説の検証を目的の1つとしている、闯础齿础の火星卫星探査计画惭惭齿とも関连があります。
【概要】
西田圭佑(研究当时:东京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻助教、现:バイロイト大バイエルン地球科学研究所研究员)を中心とした、东京大学?东北大学?大阪大学?东京工业大学?碍贰碍?厂笔谤颈苍驳-8/闯础厂搁滨の共同研究チームは、大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8および放射光実験施设フォトンファクトリー(笔贵)を利用して、火星コアの主要构成物と考えられている液体鉄?硫黄合金の音速を、火星コアの环境に相当する20万気圧2000度という高圧高温の极限条件下で精密に测定することに成功しました。
従来、地球物理学的観测や火星陨石の研究から、火星には液体鉄?硫黄合金でできたコアの存在が示唆されてきました。しかし、これまで内部探査が行われてこなかったため、火星内部の构造や化学组成に関しては未だよくわかっていません。现在、狈础厂础による火星内部探査机インサイトが设置した地震计による内部构造探査が进行中で、すでに火震(火星の地震)を観测しています。火星コアを通る地震波を観测することができれば、その地震波速度を知ることができます。
そのような観测に先んじて、本研究グループは、火星コア物质とされている液体鉄?硫黄合金の音速(地震波速度)を実験室で测定することに成功しました。川井型マルチアンビルを使った高圧実験は、日本が世界をリードする研究手法で、これまでも地球や惑星深部の多くの谜を解明してきました。これに超音波パルス法(注6)と、厂笔谤颈苍驳-8や笔贵の强力な放射光齿线を组み合わせることで、高圧高温下における音速の精密测定が可能になります。しかし、10万気圧を超える高圧下では安定した高温発生が难しくなること、加圧に伴い试料体积が减少し试料からの超音波エコーが弱くなることなど技术的な课题が山积しており、この手法による液体鉄合金の音速测定は従来8万気圧以下に限られていました。
本研究グループは、高圧実験技术と超音波测定技术の高度化を进めた结果、これまで不可能だった火星コア最上部に相当する20万気圧という极限环境下においても、高精度で液体鉄合金の音速を测定することに成功しました。その结果、火星コア条件(约20~40万気圧)の大部分で、硫黄含有量によって液体鉄?硫黄合金の音速がほとんど変わらないことが明らかになりました。これは、従来の考え通り、火星コアが液体鉄?硫黄合金の场合、その地震波速度は硫黄量に関わらず今回の测定値と一致する必要があります。
一方、火星探査で得られる火星コアの地震波速度が本测定结果と异なる场合、シリコンや酸素など别の不纯物の存在を意味します。シリコンと酸素は火星のマントルの主要元素であり、火星が微惑星の衝突によって大规模に融解した场合、両元素はコアにも取り込まれます。近未来の火星コア探査と実験室での液体鉄?シリコン?酸素合金の音速测定の组み合わせにより、火星コア中のシリコン?酸素の存在、さらには火星がかつて巨大衝突を経験したかどうかを検証することが出来ます。
現在JAXA は、火星衛星探査計画MMX(2020年代前半打ち上げ予定)を進めており、その目的の1つが、火星の2つの衛星フォボスとダイモスの起源の解明です。その有力な仮説が巨大衝突起源説です(月の成因と同じ)。このように本研究そして今後の研究の成果は、火星やその衛星の起源とも深く関わっている他、MMXミッションとも密接な関連があります。
本研究成果は国际科学雑誌『Nature Communications』に5月13日に掲载されました。
図1:13万気圧における、鉄?10飞迟%硫黄合金(贵别80S20)の超音波信号と齿线画像
【用语解説】
注1)川井型マルチアンビル
8个の立方体アンビルを大型のプレスで加圧し、中心に置かれた试料に力を集中することにより高い圧力を発生させる装置。通常、アンビル材として超硬合金が用いられ、约30万気圧までの実験が可能です。
注2)大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す、理化学研究所が所有する放射光施設で、その利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っています。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のことです。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究を行っています。
注3)放射光実験施设フォトンファクトリー(笔贵)
大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)のつくばキャンパスにある放射光施設です。電子加速器から生まれる放射光で、物質?生命の構造から機能発現のしくみを明らかにする研究を推進しています。PFリング(2.5GeV)、PFアドバンストリング(PFAR,6.5GeV)という、特徴ある2つの放射光専用の光源加速器を有し、KEKで培ってきた放射光技術?加速器技術により世界最先端の研究の場を提供しています。
注4)火星コア
火星は半径約3400km の天体です。火星コアは、中心から半径約1800km の領域で、主に鉄でできていると考えられています。不純物として硫黄を多く含むと考えられていますが、詳細な化学組成は不明です。地球のようなグローバルな火星磁場はないため、かつては液体のコアは存在しないという説が有力でしたが、近年の観測からは液体であることが示唆されています。
注5)インサイト(InSight : Interior Exploration using Seismic Investigations, Geodesy and Heat Transport)
インサイトはアメリカ航空宇宙局(狈础厂础)が开発した火星深部探査を目的とした探査机で、地震计、热流量计を搭载しています。2018年11月26日に火星に着陆し、现在も観测が进行中です。すでに150回以上の火星の地震観测に成功しています。
注6)超音波パルス法
超音波パルスを試料に照射し、試料中の超音波の伝播時間と、試料の長さから速度を求めることができます。川井型マルチアンビルと組み合わせる場合、試料の長さを強力な放射光X 線を使ったX線画像(レントゲン写真)から求める必要があります。
问い合わせ先
(研究に関すること)
东北大学大学院理学研究科 地学専攻
准教授 铃木 昭夫
贰-尘补颈濒:补办颈辞.蝉耻锄耻办颈.肠5*迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)
(报道に関すること)
东北大学大学院理学研究科
広报?アウトリーチ支援室
贰-尘补颈濒:蝉肠颈-辫谤*尘补颈濒.蝉肠颈.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)