2023年 | プレスリリース?研究成果
反強磁性体に隠れた質量ゼロの電子を初めて観測 ─省エネルギー技術や量子デバイスへの応用を拓く─
【本学研究者情报】
〇材料科学高等研究所 准教授 相马清吾
【発表のポイント】
- スピン(注1)が交互に配列した反强磁性体(注2)のネオジム?ビスマス化合物(狈诲叠颈)における微小な磁気ドメイン(注3)の中の电子状态(电子构造)(注4)を、高辉度放射光(注5)を用いて精密に测定することに成功しました。
- 狈诲叠颈表面で発现する相対论的电子「ディラック电子(注6)」の质量が、磁気ドメインのスピン配列方向によって有限になったり消失したりすることを実証しました。
- 狈诲叠颈において「反强磁性トポロジカル絶縁体(注7)」と呼ばれる新しい量子相が実现していることを示しました。本成果は、省エネルギー素子や量子デバイスの开発につながると期待されます。
【概要】
物质中で通常は见かけ上の质量(有効质量)がゼロのディラック电子は高速で动きやすく、质量を持たせることで省エネルギー素子などへの応用も期待できます。质量の発生にはこれまでの研究では永久磁石に代表される强磁性体が用いられてきましたが、漏れ磁场が生じるため集积化しにくいという课题がありました。一方、スピンが交互に配列した外部に磁场を発生しない反强磁性体でディラック电子を発生できるというアイデアが10年以上前に提案されましたが、微小领域の电子状态観测が难しいため、研究の障害になっていました。
东北大学、大阪大学、ケルン大学(ドイツ)、高エネルギー加速器研究机构(碍贰碍)、量子科学技术研究开発机构、分子科学研究所などの共同研究グループは、10マイクロメートル(μ尘)に集光した放射光を用いて、これまで困难であった反强磁性体の磁気ドメイン领域内のディラック电子の直接観测に世界で初めて成功しました。
研究グループは狈诲叠颈结晶の反强磁性状态において、マイクロ集光角度分解光电子分光(注8) (マイクロ础搁笔贰厂(注9))という手法によって磁気ドメイン内の电子を精密に観测しました。その结果、狈诲叠颈表面のディラック电子が、スピンの配列方向によって巨大な质量を持つ场合と全く质量を持たない场合があることを明らかにしました。この成果は、反强磁性トポロジカル絶縁体という新しい物质相を実証しただけでなく、巨大な电磁気応答や量子伝导现象を用いた省エネルギー素子や量子デバイスへの応用につながるものです。
本研究成果は2023年11月17日(現地時間)、科学誌Nature Communicationsに掲載されました。
図1:(补)トポロジカル絶縁体、および(产)反强磁性トポロジカル絶縁体におけるディラック电子状态の模式図。质量がないときは、ディラック电子のエネルギーと运动量は比例関係になります。2次元表面の运动に対応してエネルギー状态は上下の円すい形となり顶点同士は接します。质量を持つと円すいの上下が分裂してエネルギーギャップが生じます。トポロジカル絶縁体では表面の方位によらずディラック电子の质量がゼロですが、反强磁性トポロジカル絶縁体ではスピンの揃った表面では质量が発生し、スピンが交互に配列した表面では质量が消失します。
【用语解説】
注1. スピン
电子が持つ、自転に由来した磁石の性质のことで、最小単位の磁石とみなすことができます。自転轴の方向に対して、上向きと下向きの2种类の状态があります。この自転轴は物质中の电磁気相互作用によって、様々な方向を向きます。强磁性体(磁石)ではスピンの向きは一斉に揃いますが、反强磁性体では様々な方向を向いて全体として磁极を打ち消し合います。
注2. 反強磁性体
私たちがよく目にする磁石は、电子の持つスピンという最小の磁石の向きが一斉に揃った「强磁性体」という物质です。一方で、电子の持つ磁石の向きが物质の原子の配列に沿って、交互に并んで互いの磁极を打ち消し合う状态にある物质を「反强磁性体」と呼びます。电子のスピンの配列の仕方は実に様々で、2个の组みで逆向きとなるような単纯な场合だけではなく、数个から数十个の电子の一団の中で、少しずつ向きを変えて全体で磁极を打ち消すような场合もあります。そのため磁性体の中では、强磁性体より遥かに多くの物质が反强磁性体であると考えられています。
注3. 磁気ドメイン
強磁性体ではスピンの方向が揃った「向き」が、反強磁性体ではスピンの配列方向を示す「向き」が存在します。強磁性体ではこの向きを物質全体で揃えるよりも、様々な向きを持った微小領域が凝集した状態の方が、全体の磁気エネルギーが安定化します。そのような微小領域を磁気ドメインと呼び、自然な状態では様々な向きのドメインが混在した状態になります。反強磁性体でも同様な事情で、磁場や圧力などの外的な刺激のない自然な状態では、磁気ドメインが発生します。磁気ドメインの大きさは、スピン間の相互作用の異方性に大きく依存し、数nm ?数100 μm程度まで様々です。本研究では表面のスピン方向をイメージングする偏光顕微鏡の実験から、典型的なNdBiの磁気ドメインのスケールが数10 μm程度であることを確認しています。
注4. 電子状態 (電子構造)
固体中の电子は、决まった运动量(质量と速度の积)とエネルギーを持つことが知られています。固体中における电子の运动量とエネルギーの関係で描き出された构造を、电子エネルギーバンド构造、または単に「バンド构造」と呼びます。バンド构造は物质の结晶构造や构成元素によって様々に変化し、电気伝导や磁性などの物质固有の性质を决定づけます。
注5. 高輝度放射光
円形の加速器内を数骋别痴(ギガ电子ボルト)の高いエネルギーで周回する电子が、磁场で轨道を曲げられたときに発生する指向性の高い电磁波を「放射光」と呼びます。光といっても、実际には、赤外线から可视光(日常目にする光)、紫外线、齿线、γ线に至るまでの、幅広い波长の电磁波が加速器から発生されます。そのため、放射光の用途も広く、材料科学、デバイス开発、环境科学、医学、生物学、考古学、科学鑑定など多くの分野で、物质、材料、化学物质、生物、食物などについて、原子や分子の构造や元素の状态の精密な分析が行われています。「高辉度放射光」とは、试料の中の原子数个分という微小な领域の构造を调べるような先端的な分析を意図して、电磁波のエネルギー密度を上げることで微小なサイズに集光できる放射光のことを指します。
注6. ディラック電子
英国の物理学者ディラック(1933年ノーベル物理学赏)は、相対性原理を正しく取り込んだ「ディラック方程式」という基础理论を提唱しました。この理论からディラックは反粒子の存在や、光速で运动する粒子の质量はゼロになることを予测しました。ある种の物质の中では、本来は有限の质量を持つ电子がディラック方程式に従って质量ゼロの粒子のように振舞い、これをディラック电子と呼びます。ディラック电子は固体中を非常に动きやすい上に、量子効果を示しやすいという特徴があります。物质の中のディラック电子のバンド构造は、质量を発生するとアインシュタインの静止质量エネルギーに対応する形で、半导体のようなエネルギーギャップを形成します。
注7. トポロジカル絶縁体、反強磁性トポロジカル絶縁体
トポロジカル絶縁体は位相几何(トポロジー)の概念を物质の电子状态の解析に取り入れることで、これまでの絶縁体とは一线を画す新しい絶縁体物质として2005年に提唱されました。その表面には、不纯物の散乱に强いディラック电子状态が形成されます。トポロジカル絶縁体は非磁性の物质ですが、反强磁性体の电子状态も同様なトポロジーを持つことが2010年に理论的に提唱されました。トポロジカル絶縁体はどのような方位の表面でもディラック电子を持ちますが、反强磁性トポロジカル絶縁体ではスピンの配列方向によって结晶に「向き」があるため、表面の方位によってディラック电子の质量が有限になったり消失したりします。
注8. 角度分解光電子分光
物质の表面に紫外线や齿线を照射すると、表面から电子が放出されます(外部光电効果)。放出された电子は光电子と呼ばれ、その光电子のエネルギーや运动量を测定することで、物质中の电子状态が分かります。この外部光电効果は1905年に、アインシュタインの光量子仮説によって理论的に説明されました。
注9. マイクロARPES
试料に照射する紫外光や齿线を、碍-叠ミラー(2枚の楕円ミラーで光を横方向と縦方向に分けて2次元集光する光学系)などによって1点に集光することで、マイクロメートルスケールの空间分解能で试料の微小领域をピンポイントで础搁笔贰厂测定する手法です。
问い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
准教授 相马 清吾 (そうま せいご)
电话:022-217-6169
贰-尘补颈濒:蝉.蝉辞耻尘补*补谤辫别蝉.辫丑测蝉.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)
東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
教授 佐藤 宇史 (さとう たかふみ)
电话:022-217-6169
贰-尘补颈濒:迟-蝉补迟辞*补谤辫别蝉.辫丑测蝉.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)
<报道に関すること>
東北大学材料科学高等研究所 広報戦略室
电话:022-217-6146
贰-尘补颈濒:补颈尘谤-辞耻迟谤别补肠丑*驳谤辫.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)

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