2026年 | プレスリリース?研究成果
岩石と水の反応による水素生成プロセスの秘密に迫る ?岩石を詳細解析、地下の水素資源探索の手がかりにも~
【本学研究者情报】
〇环境科学研究科 教授 冈本敦
【発表のポイント】
- 地球を构成する岩石が水と反応して水素を生み出す现象は、生命のエネルギー源や天然资源を生むプロセスとして注目されています。これまで蛇纹岩化反応※1等で水素が生成されること自体は知られていましたが、反応のどの段阶でどれほどの水素が発生するのか、また岩石の种类によって発生する水素の量がどの程度异なるのかについては分かっていませんでした。
- 岩石に含まれる鉄は多様な酸化状态を示し、水を还元して水素を生み出す反応に深く関わっています。そこで本研究では、水素発生量の指标として鉱物中の鉄の量と酸化状态に着目し、放射光実験施设フォトンファクトリーアドバンストリング(PF-AR)において実施したX线吸収微细构造分析※2を用いることで、水素発生の键を握る鉱物中の鉄の化学状态を详细に解析しました。この手法により、岩石に含まれる鉄の分布と化学状态を高い空间分解能で可视化することに成功しました。この手法をICDPオマーン掘削※3で得られた下部地殻と上部マントル※4の岩石コアに适用することにより、岩石の种类ごとの水素発生量と水素の発生段阶に関する新たな知见を得ました。
- 本研究の成果は、岩石圏の観察に基づく水素発生过程の物质的証拠をもとに、天然水素の発生メカニズムとその地质背景の理解を深め、生命のエネルギー源の多様性を示します。上部マントルの蛇纹岩化だけでなく、より地球表层に近い浅い岩体でも水素が発生することを示した今回の研究成果は、新しいエネルギー资源としての水素资源の探索に役立つ指标となる可能性があります。
【概要】
海洋底のマントルや下部地殻に含まれるかんらん石と水の反応、すなわち蛇纹岩化反応は、自然界における水素生成の主要なメカニズムとして知られています(図1)。この反応によって生まれる水素は、地下深部に生きる微生物のエネルギー源となるだけでなく、人类が利用可能な新たなエネルギー资源としても関心が高まっています。この反応では、岩石中の2価の鉄が3価の鉄へと酸化されると同时に水が还元され、その结果として水素が生成されます(式1)。しかし、水素発生の键を握る鉄の分布や化学状态が、反応の进行にともなってどのように変化するのかこれまで十分に分かっておらず、天然水素の生成プロセスの理解を难しくしていました。
高エネルギー加速器研究机构 物质构造科学研究所、东北大学、国士舘大学、国立极地研究所/総合研究大学院大学、海洋研究开発机构の共同研究グループは、ICDPオマーン掘削で得られたオマーンオフィオライト※5の下部地殻から上部マントルにかけての岩石掘削试料を対象として、X线吸収微细构造分析を用いて水素発生の鍵を握る鉱物中の鉄の化学状態を詳細に解析しました(図2)。その结果、岩石の种类や反応の进行段阶に応じて水素の発生量が异なることを定量的に示しました。下部地殻の岩石は反応の初期段阶で岩石1kgあたり24~366 mmolの水素を発生した可能性があり、これは従来主要な水素発生源と考えられてきた上部マントルの蛇纹岩化による水素発生量(岩石1kgあたり71~393 mmol)に匹敌します。このことは、従来水素の発生源として注目されて来なかった下部地殻の岩石も重要な水素発生源であることを意味します。一方、反応が进むと下部地殻の岩石に特有のケイ素を多く含む鉱物の変质によって、水素生成が抑制されることも明らかになりました。また、上部マントルの岩石は、反応が进んだ后でも2価の鉄が残存し、反応の后期における水素発生に寄与する可能性が示唆されました。本研究の成果は、天然水素がどこで?どの段阶で?どれだけ生まれるのかを理解するうえで重要な手がかりを提供するものであり、将来的な水素资源の探索における有用な指标となる可能性があります。
今回の成果は2月12日に専门誌Geochimica et Cosmochimica Actaのオンライン版に掲载されました。
図1. 海洋底の地質構造の模式図と、岩石と水が反応する様子を示した概念図。厚さが約7kmの海洋地殻の下には上部マントルが存在している。海洋底の一部の場所では、これらの岩石と水(海水)が反応している。
【用语解説】
※1. 蛇紋岩化反応
かんらん石や辉石といったマグネシウムや鉄を多く含む鉱物で构成される岩石が水と反応し、蛇纹石やブルース石、磁鉄鉱といった鉱物からなる岩石(蛇纹岩)に変化する反応。反応物であるかんらん石や辉石に含まれる2価の鉄が酸化し3価の鉄に変化する过程で水を还元し、水素を発生させる(式1を参照)。
※2. X線吸収微細構造解析(XAFS: X-ray Absorption Fine Structure )
物质に齿线を照射しその吸収スペクトルを解析する手法。対象とする元素(今回は鉄)の化学状态や配位构造といった情报が得られる。
※3. ICDPオマーン陸上掘削
国际深海科学掘削计画(滨翱顿笔)の陆上版に相当する国际共同研究プロジェクト、国际陆上科学掘削计画(滨颁顿笔)が主导し、2016年から2018年にかけて中东のオマーン国で実施された陆上掘削。かつての海洋地殻と上部マントルを连続的に贯く世界初の掘削であり、本研究ではその岩石コアを用いて分析を行った。
※4. 上部マントル
地殻の下に広がる、主にかんらん石という鉱物で构成される固体の岩石の层。高温高圧の环境で非常に长い时间をかけて流动する。
※5. オフィオライト
海洋地殻から上部マントルにかけての连続した地层の重なりがみられる岩体。今回の研究対象である中东のオマーン国のオフィオライトは世界最大规模であり、下部地殻や上部マントルといった通常は採取が难しい地下深部の岩石を大规模に直接観察することができる、世界的にも非常に贵重な场所である。
【论文情报】
タイトル:Depth variations in multi-stage hydrogen generation associated with serpentinization in the lower crust and mantle sections of the Oman Ophiolite
著者:Kazuki Yoshida*, Atsushi Okamoto, Ryosuke Oyanagi, Masakazu Fujii, Kenta K. Yoshida, Yasuhiro Niwa, Yasuo Takeichi, and Masao Kimura
掲載誌:Geochimica et Cosmochimica Acta, 2025 (*Corresponding author)
顿翱滨:
问い合わせ先
(研究に関すること)
东北大学大学院环境科学研究科
教授 冈本 敦
TEL: 022-795-6334
Email: atsushi.okamoto.d4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(报道に関すること)
东北大学大学院环境科学研究科
情报広报室
TEL: 022-752-2241
Email: kankyo.koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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